相手の時間を奪わないということ
つい、人から話を聞くとき、「教えてくれて当たり前」だと思ってしまうことがある。
分からないことがあれば、説明するのが相手の役目で、理解できないのは相手の説明の仕方が悪い。
今思えば、かなり失礼な態度だが、正直に言えば、昔の自分はまさにそうだった。
頭の中にある知識なんて、教えたからといって減るものじゃない。
だったら、ちょっとくらい教えてくれたっていいじゃないか。
そんな感覚で、相手の時間を無自覚に使っていた。
当時の自分にとって、時間はどこか軽いものだった。
余っているもの。
空いている人が差し出してくれるもの。
少なくとも、「命と同じ重さ」だなんて考えたことはなかった。
そんな価値観が変わり始めたのは、年を重ね、さまざまな本を読むようになってからだ。
時間は、お金ではなく、命そのものだ。
この言葉に、何度も出会った。
最初はきれいごとのように感じていたが、あるとき突然、腑に落ちた瞬間があった。
お金は失っても取り戻せる。
働けばいいし、稼げばいい。
でも、時間だけは違う。
どれだけ成功しても、どれだけお金を積んでも、昨日の一時間は二度と戻らない。
失われた時間は、そのまま人生から削り取られた時間だ。
そう考えたとき、背筋が少し冷えた。
自分はこれまで、どれだけ軽々しく、他人の命を使ってきただろうか。
そして同時に、自分自身の命も、どれだけ雑に扱ってきただろうか。
自分の時間も、相手の時間も、同じ重さを持っている。
その当たり前の事実を本気で理解した瞬間、それまで普通だと思っていた行動が、次々と恥ずかしいものに見えてきた。
時間への意識が変わると、人の見え方が変わる
時間を命として捉えるようになると、不思議な変化が起こる。
それは、「自分の時間を奪う人」が、はっきりと見えるようになることだ。
説明を丸投げする人。
少し調べれば分かることを、当然のように聞いてくる人。
こちらの都合を考えず、延々と話し続ける人。
以前なら、「まあ仕方ない」と受け流していた。
人それぞれだし、忙しいのは自分だけじゃない。
そうやって、自分を納得させていた。
けれど今は、はっきりと違和感を覚える。
それは怒りというより、「これは違う」という静かな感覚だ。
だからといって、相手を責めるわけではない。
説教もしないし、正そうともしない。
ただ、必要以上に関わらない。
距離を取る。
それだけだ。
冷たいと思われるかもしれない。
でも、それは誠実な選択だと思っている。
自分の命を守るという意味で。
ギバーであろうとするときほど、時間を意識する
時間の価値を理解すると、与える側としての姿勢も変わってくる。
以前の自分は、何かを説明するとき、つい情報を詰め込みすぎていた。
「せっかくだから全部伝えよう」
「どうせなら、網羅的に話そう」
一見すると親切だが、今振り返ると、それは自己満足に近かった。
今は違う。
設定は簡潔に、要点だけを伝える。
相手が受け取っても困らない情報だけを選ぶ。
それ以上が必要なら、相手が自分で深掘りすればいい。
その余白を残すことも、優しさの一つだと思うようになった。
ここからが本題:時間を奪わないための具体的な解決策
ここからは、実際に自分が意識していること、そして行動に移してきたことを書く。
まず一つ目。
聞く前に、必ず一度調べる。
分からないことがあったとき、反射的に人に聞かない。
まず自分で調べる。
考える。
それでも分からなければ、その時点で初めて質問する。
この一手間があるだけで、質問の質は驚くほど変わる。
「ここまでは調べたのですが、ここが分かりません」
この一言があるだけで、相手の負担は大きく減る。
二つ目。
質問には、必ず目的を添える。
質問が怖いのは、終わりが見えないところにある。
だからこそ、「なぜそれを知りたいのか」を最初に伝える。
目的が分かれば、相手は必要な部分だけを選んで答えられる。
結果的に、双方の時間を守ることにつながる。
三つ目。
長話をしそうになったら、一度止まる。
話している途中で、自分に問いかける。
「これは今、本当に相手に必要だろうか」
この癖をつけるだけで、無駄な説明は自然と減っていく。
沈黙を恐れる必要はない。
沈黙は、時間を尊重している証でもある。
四つ目。
自分の時間を軽んじる人からは、静かに離れる。
何度伝えても、こちらの時間を尊重しない人はいる。
そういう人を変えようとする必要はない。
距離を取る。
それだけでいい。
時間を大切にする人同士は、自然と引き合う。
逆もまた然りだ。
行動の後押し:今日から持ってほしい、たった一つの問い
「今、自分は相手の命を使っていないか?」
大げさに聞こえるかもしれない。
でも、時間は本当にそれほど重い。
この問いを持つだけで、言葉の選び方が変わる。
距離感が変わる。
人との関わり方が変わる。
まとめ
相手の時間を奪わない。
それは、特別なスキルでも、才能でもない。
ただ、意識の問題だ。
時間は命。
自分の命を大切にするように、相手の命も大切にする。
その姿勢が、結果的に自分の人生を、静かに、しかし確実に豊かにしてくれる。
この文章が、あなた自身の時間の使い方を、ほんの少しでも見直すきっかけになれば嬉しい。


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