上司は部下より優れていなければ無能なのか?

気づき

上の役職の人間は、部下のできることを全てできないと無能なのか

「上の人間なんだから、それくらいできて当然ですよね」

この言葉を、あなたはどこかで聞いたことがないでしょうか。あるいは、直接自分に投げかけられた経験があるかもしれません。役職が上であるという理由だけで、部下のやっていることをすべて理解し、すべて実行できなければならない。できなければ「無能」と断じられる。

この考え方は、一見するともっともらしく聞こえます。しかし、本当にそうでしょうか。

職人の世界と、組織の世界は同じなのか

職人や技術屋の世界では、師匠は弟子がやっていることをすべてできて当然だ、という価値観があります。確かにその通りでしょう。技術は積み重ねであり、教える側ができなければ教えられない。弟子は師匠の背中を見て学び、やがて師匠を超えていく。それが健全な技術継承の形です。

しかし、営業、企画、管理、調整、育成など、多岐にわたる職務を持つ組織ではどうでしょうか。すべてを一人で完璧にこなせる人間など、現実的に存在するでしょうか。

もし仮に存在したとしても、その人は現場に張り付き続けることになり、組織全体を見渡す余裕を失ってしまうでしょう。

「全部できる人」は本当に有能なのか

ジェネラリストは、その会社以外では役に立たないことが多い。そんな厳しい意見を耳にすることがあります。確かに、特定の環境に最適化された能力は、場所が変われば通用しないこともあります。

しかし、それは「役に立たない」ことと同義でしょうか。

ジェネラリストの本当の価値は、「自分ができるかどうか」ではありません。

自分ではできない。だが、誰に聞けばいいかを知っている。誰が代わりにやってくれるかを知っている。どう頼めば動いてくれるかを知っている。

この「引き出し」の多さこそが、問題解決能力なのです。

リンカーンの有名な逸話

学歴のなかったリンカーンが、記者にこう問われた話があります。

「あなたはその問題について何も知らないのですか?」

リンカーンは、こう返しました。

「私は知らない。しかし、誰に聞けばいいかは知っている。教えてくれる人がいる。それで何か問題があるかい?」

この言葉には、リーダーの本質が凝縮されています。

「知らない」ことは、罪ではない

多くの人が勘違いしています。「上に立つ人間は、すべてを知っていなければならない」と。しかし、知識や技術は無限に広がり続けています。すべてを一人で抱え込むこと自体が、非現実的です。

重要なのは、「知らないこと」を隠すことではありません。「知らないことを、どう補うか」です。

ここからが本当の解決策

では、「上の人間なんだからできて当然」と言われたとき、どう考え、どう行動すればいいのでしょうか。

解決策① 役割の違いを言語化する

まず理解すべきなのは、上司と部下は「能力の上下」ではなく、「役割の違い」であるということです。現場で手を動かすことが役割の人と、全体を整えることが役割の人は違います。

自分の役割を言語化できていないと、他人の価値観に振り回されてしまいます。

解決策② 「できない」を恐れずに開示する

できないことを隠そうとすると、余計に無能に見えます。むしろ、「ここはあなたの専門だ」「ここは任せたい」と明確に伝える方が、信頼は高まります。

人は、「全部できる人」よりも、「自分を正しく評価してくれる人」に付いていきます。

解決策③ 引き出しを増やす行動を取る

誰に聞けばいいのか、誰が得意なのか、どんな頼み方をすれば動いてくれるのか。この引き出しは、日々のコミュニケーションでしか増えません。

雑談を軽視しないこと。相手の強みを観察すること。感謝を言葉にすること。これらすべてが、将来の問題解決につながります。

解決策④ 「全部できない自分」を肯定する

完璧である必要はありません。むしろ、完璧を装うことが、組織の成長を止めます。自分ができない部分を認めることで、周囲の能力が活きてきます。

行動の後押しとして、今日できること

  • 「それは誰が一番得意か」を一度考えてみる
  • 自分が頼っている人を3人書き出す
  • 「ありがとう」を一つ多く伝える

それだけで、あなたの引き出しは確実に増えます。

まとめ:本当の有能とは何か

上の役職の人間が、部下のできることをすべてできなければ無能なのか。答えは、明確に「違う」です。

本当の有能さとは、すべてを自分でやることではありません。適切な人に、適切なタイミングで、適切に頼めること。そのための関係性と判断力を持つことです。

「私は知らない。でも、聞ける」

この言葉を胸に、今日から一歩、肩の力を抜いて進んでみてください。

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